- 研究
地域博物館のデジタル展示に人はなぜ惹かれるのか
2026年8月31日
<概要>
東京科学大学 環境・社会理工学院 融合理工学系のガイ・ギョウテン(艾尭天)博士後期課程学生(研究当時)、野原佳代子教授、シュ・シンジョ(朱心茹)准教授らの研究チームは、龍子記念館(東京都大田区)のデジタル展示を事例に、来館者の感情的なつながりが参加意欲を支える重要な要因であることを明らかにしました。
博物館のデジタル化が進む中、特に地域博物館では、来館者が感じる体験的真正性がデジタル参加意欲に与える影響は十分に解明されていませんでした。そこで研究チームは、技術受容に関する理論モデルUTAUT2に、博物館体験における体験的真正性の要素を組み込んだ、独自の分析モデルを構築しました。このモデルに基づいて、龍子記念館のデジタル展示を体験した266名を調査した結果を、構造方程式モデリング(SEM)および人工ニューラルネットワーク(ANN)の手法を用いて分析しました。
その結果、体験的真正性の1つであり、展示品への感情的なつながりを示す感情的真正性は、UTAUT2の要素である「享楽的動機(楽しさ)」や「社会的影響(他者と共有したい気持ち)」を媒介して、デジタル参加意欲に強い間接的影響を及ぼすことが分かりました。また感情的真正性は、今回構築したモデルで最も重要度が高い因子であり、デジタル参加意欲を下支えする土台として機能することが示されました。
本研究の成果は、地域博物館がデジタル化する際には、技術的な機能だけでなく、地域の記憶や物語を活かした感情的な体験づくりを重視すべきであることを示しています。限られた資源の中でデジタル化に取り組む地域博物館にとって、来館者の心に響く展示づくりの新たな指針となることが期待されます。
本成果は、6月18日(現地時間)付の「ACM Journal on Computing and Cultural Heritage 」誌に掲載されました。
<ポイント>
・地域博物館のデジタル展示への参加意欲には、来館者の感情的なつながりが、技術的な使いやすさよりも大きく影響することを発見
・技術受容モデルUTAUT2に体験的真正性を組み込んだ独自分析モデルによる来館者への調査結果を、構造方程式モデリングと人工ニューラルネットワークで分析
・地域の記憶や物語を活かした感情的な体験づくりを中心とした、地域文化のデジタル活用に新たな指針を提供

※このページは、本学の融合理工学系サイト「News」から抜粋し、転載しています。詳細は以下URLからご覧ください。
https://educ.titech.ac.jp/tse/news/2026_07/069945.html

